ここ最近の日本では地獄のような日照りが続き、暑いを通り越して熱いの域に達していますが皆さん夏バテなんてしてませんか?ちゃんと食事はとってますか?と、まるで遠くNYに暮らす我が子を思いやる田舎のママンみたいな気持ちのミスターMです。熱いと言えば「恋」そして「闘い」というわけで今回のテーマは私の夏の思い出のお話です。
こう見えても実は私が二十歳前後の頃はバリバリのヤンキーで地元では名の知れた不良でした。いつも胸の奥にフラストレーションを抱え、その眼は刃物のように鋭く、そして氷のように冷たい心の持ち主で自分勝手な大人たちや薄汚れた社会にノーを突き付ける孤独な青年だったのです。ついたアダ名は「ロンリーウルフ」。喧嘩の実力も折り紙付きでその数およそ100万とも言われる地元の福岡市を支配する不良チーム(ちなみに福岡市の人口は130万人)をたった1人で壊滅に追いやるという、、、いや、まぁ「孤独」という点以外はいま思い付いた創作ですが。
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そんなツッパリ夜露死苦な私ですから舎弟というか子分がいるわけで、リーダーである私を含め構成メンバー2人という壮大な規模の超極悪チーム「ミスターM軍団」を組織しては夜の街を駆っていたのです。もちろん自転車で。しかも立ち漕ぎで。その日もいつものように夜の国道を我が物顔で走っていたところ、ミスターM軍団幹部(にして私以外唯一のメンバー)の田上(通称ビリー)が突然こんなことを言い出しました。
「Mさん!じ、自分、好きな人ができたッス!」
こりゃリーダーの私としても聞き捨てなりませんよ。軍団幹部にこんな愛の物語が生まれ始めているなんて。普段から可愛がっている後輩が恋をしたとなると全力でバックアップしてやるのが我がミスターM軍団ってもんです。
「Mさん!デートってしたコトありますか?」
「お、お、おう!ももも勿論よ!」
「実は来週の土曜日にデートすることになったんスけど、喧嘩に明け暮れるばかりの自分はどうしていいかわからないッス!デートに勝つ方法を教えてほしいッス!」
「ぅ、うん、、任せとけ、、」
こうしてこれまでにない最大の敵を相手にしたミスターM軍団の新たな闘いの火蓋が切られたのです。
「よし、ビリー!デートは第一印象が肝心だ!当日はナメられないように素肌に直接革ジャンというワイルドなスタイルで攻めろ!」
「Mさん!自分、革ジャンなんて持ってないッス!」
「大丈夫!俺のナウいやつを貸してやる!」
「うわ!この革ジャン何だか変なニオイがするッスよ!ワキの部分とか特に!」
「心配するな!男のフェロモンだ!」
「そっか!Mさん頼りになるッス!」
とりあえずこれで服装は完璧ですが、問題は中身です。見せかけだけの強さではデートという名の喧嘩に勝つことはできません。
「ビリー!おまえ車あるか?」
「ハイ!母ちゃんのボロい軽が!」
「じゃあナメられないように窓を全開にして夏の定番曲を大音量でガンガンかけろ!ラッツ&スターの『め組の人』やクラスの『夏の日の1993』な!もちろん運転席の窓からタバコを持ったまま腕を出してのドライブだ!」
「それ、最高にカッコイイッス!」
そして最も重要なのがデートコースです。適切なデートコースのチョイスこそが最大の難局であり第一印象の関門を切り抜けた後の勝敗を左右する決め手となるでしょう。
「ド定番だがお茶だ!彼女が乗り込んだらまず近くでお茶するんだ!」
「喫茶店ッスか?」
「バカ!ファミレスのドリンクバーの方がいい!安いしおかわり自由!ほら、俺のドリンクバー割引券をやるから使え!」
「ありがとうございまス!」
思わず私の指導にも熱が籠もります。ビリーと私は同じミスターM軍団のメンバーですから言わば一心同体です。今回のデートはビリー1人だけの闘いではなくビリーを代表としたミスターM軍団全体の闘いでもあり、我々の喧嘩師としてのプライドを賭けた空前のバトルなのです。
「もう俺から教えることは何もない!自分を信じて精一杯やってこい!」
「ハイ!さすがMさん、1人で100万人のチームを壊滅させただけのことはあるッス!」
「あぁ、凶暴な不良どもが集まる悪の組織『ブラッディ・サタン』な!」
「あれ?この間は『ダーク・ケルベロス』って言ってませんでしたっけ?」
「ん?ぇ、、まぁ、どっちも倒した、、、」
「やっぱスゲェ!」
運命のデート当日、終わったらすぐに私に電話するという約束を交わしたビリーは最高にイカしたファッションで車に乗り込み、革ジャンを貸した私の家から彼女との待ち合わせ場所まで意気揚々とボロい軽自動車を走らせるのでした。そしてになる結果ですがソッコーで決着ついたようで開始時刻が午後6時のところ、早くも6時2分には私の電話が鳴ってましたからね。何か天気の話だけしてじゃあね、で終わったらしいです。敵もシッポを巻いて逃げ出すミスターM軍団の強さはやはり本物ですね。
まぁどうしてこんな話を思い出したかと言うと、ここのところ5年近く連絡をとってなかったビリーと先日街でバッタリ遭遇しましてね。ビリーのヤツ彼女なぞ連れてやがったんですよ。なぜ彼女ができた時点で私に一言挨拶がないのかと。ていうか女がビビッて近づかないのがミスターM軍団じゃないかと。
そういうわけでビリーには制裁として私が倒した100万人の部下を差し向けてやろうかと思います。夜露死苦。