モテません。
どうしようもないほどモテません。
けれど寂しくありません。私には大切な仲間がいますから。ある時は互いに競いあい、そしてまたある時は互いに支えあう仲間は、私にとって掛け替えのないものです。彼らは私の人生をより一層刺激的で豊かなものにしてくれます。恋人のいない寂しさを補って余りある存在なのです。今回はそんな私の仲間たちのお話です。
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『類は友を呼ぶ』というように、友達グループには似たような者が集まります。趣味、考え方、出身地、年齢、環境などの近いもの同士がグループを形成するんですね。ある一つの話題に全員が参加できたりするのが仲間なんですよ。
そこで私の所属するトモダチ共同体を見てみると、それぞれに個性的でいろんな奴がいるんです。各人が独自のキャラを持ち、みんなバラバラなように見えても、彼らをよくよく見てみるとやはり一つの共通点があるわけですね。
というのも、全員が神に見放されたかの如くブサイクなんです。
「カネと権威を抜いた堀江社長」みたいな奴とか、「爆発力のない大人しくて真面目な江頭２：５０」のような奴とか、そいつからソレ取ったら何も残らねーよ！みたいなのを体現したようなのばかりです。当然のように女性との接点は、２０代前半であるはずの彼らの頭髪と同様に激薄です。「知り合いのオンナ紹介してよ～」なんて迂闊なことを言うと、彼らのお母さんを紹介されかねません。クリスマスやバレンタインデーは恋人と過ごす日ではなく、世の不条理と自分の不幸な運命を相手に戦う決起集会なのです。
そんな誇り高きモテない連盟を結成した我々ですが、先日ある事件が勃発しました。連盟の中に裏切り者がいるらしいという噂が広まったのです。我がモテない連盟の「えなりかずき」として名高い地味キャラのＹに、どうやらカノジョが出来たとのこと。早速Ｙ以外のメンバー全員に集合をかけ、近所のファミレスで緊急会議です。
ここ最近のＹの不審な行動を証言するのは、連盟の下っ端であり、カノジョいない歴１年の少々ブサイクなＩ。この証言をもとに、連盟として何らかの処分を課すべきだと主張するのはカノジョいない歴５年を誇る、かなりブサイクな幹部クラスのＵ。そして何よりもまずＹの疑惑の真相究明を優先するという最終決断を下したのは、カノジョいない歴２４年の圧倒的ブサイク、名誉あるモテない連盟会長ことミスターＭ、つまりこの私です。
会議は終了したものの、事態は急を要します。会長である私が直々にＹを尋問するため同ファミレスに呼び出すことになりました。早速Ｙの携帯に電話です。
私「もしもし？Ｙ？今どこ？」
Ｙ「え…？なんで？」
―――すんなり答えないあたりが、やはり怪しいです。メンバーも固唾を呑んで状況を見守ります。―――
私「いや、みんなで集まっててさ～。で、ドコよ？」
Ｙ「ちょっと今…外。外にいる。」
―――それはいくらなんでも範囲が広すぎです。―――
私「こっち来いよ。」
Ｙ「いや、今トモダチと…ブチッ…プー、プー、」
通話が途絶えました。もうこの時点で判定はアウトです。つぅかトモダチって誰だよ！ともかく、私からは連絡がつかないため、同行のメンバーの後輩からＹに以下のようなメールを送らせてみました。
「Ｍ会長に誘われましたか？自分は断りましたけど、Ｙさんは会長と一緒にいるんですか？」
これですっかり私と後輩が一緒でないと思い込んだＹは、すぐにメールを返してきました。
「今、別の友達と２人で隣町のファミレス。」
あいつは本物の馬鹿です。そして私たちの目を避けるため、わざわざ隣町まで行くなんて何というあざとい奴でしょう。私たちは、真相の究明のため…いや、裏切り者を消すために近所のファミレスから隣町のファミレスまで急行しました。前代未聞のファミレスのハシゴです。
目的地に着き、駐車場から店内を覗くと、何やら楽しそうに談笑している「えなりかずき」が見えます。間違いなくＹです。そしてその対面席に座っているのは、ロングヘアーのか細い女性でした。後ろ姿だったために相手の顔は見えなかったのですが、この時点で悲しみと悔しさを抑えきれないメンバーは、早くも嗚咽を漏らしていました。むせび泣くメンバーを励ますために、そして何より私自身を奮起させるために、会長として気丈に声をかけました。
「待て！泣くな！Ｙの相手は女とは限らねーって！きっと華奢な金八先生みたいな奴だって！」
我ながら苦しいこのフォローは失敗に終わったかと思いきや、何故か一気に活気付くメンバー達。Ｙが女性と２人でデートなどあり得ないということは仲間である我々が一番よく知っているのです。女ではない。女であったとしてもカノジョではない。姉ちゃんか妹でしかない。そう確信しつつ店内に突撃するところでスペースの都合上、今回はお終いです。
Ｙの相手とは？そしてモテない連盟の運命は如何に？次回のタイトルは『Ｙ！公開処刑！』…ってタイトルで軽くネタバレしているような気もしますが、とにかく次号の『踊るでしかし』も見逃すな！