はいどーもどーも。オサレに敏感!みんなのファッションリーダー的存在でお馴染みのミスターMです。
この度、私が長いこと愛用していたオサレな財布が遂に寿命を迎えましてですね。まぁ近所のファッション最先端スポットのダイエーで買ったヤツなんですけども、長年の酷使によって底に穴が開いて小銭がポロリと落ちてしまうのです。
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小銭が落ちるだけならばまだよいものの、内緒で通っているいかがわしい店のカード、しかもスタンプがかなり貯まってたりするヤツを財布の隙間から落とそうものなら、即ち私の命を落とすに等しいわけでありまして、こんなとこで死ぬワケにはいかんと新たな財布を、つまり命の手綱を求めて街へと繰り出した次第であります。
いやね、いつものダイエーでも悪くはないのですが、オサレとは時流によって日々変化するもので、そうなると私も一定の場所にとどまらず次なる高みを目指して都会のデパートというハイセンス剥き出しのオサレの牙城に挑まなければなりません。それがファッションリーダーである私の使命なのです。
つぅわけで無事に何事もなく田舎から電車を乗り継いで、セレブ御用達っぽい店が軒を連ねるデパートの入り口に着いたんですけれども、ここから先は戦場です。セレブにあたわない一般人が一歩でも店内に足を踏み入れようものなら忽ち全身黒ずくめの屈強なガードマンが現れ、殴る蹴るの暴行を受けた挙げ句に外へつまみだされるのはもう確定です。
細心の注意を払いつつ突撃し、迫り来る爆撃をかわしながらとにかくセレブリティ炸裂なブランドの店舗の中へ。陳列スペースは広いくせに、そこに展示してある商品はチラホラ。つまり「スペースを無駄に使うことで何だかものすごく贅沢している気にさせる」というセレブショップの常套手段ですね。緊迫した空気の中で思わずビビッて腰が引けてしまいそうになりますが負けません。えぇ負けませんとも。
平静を装い陳列台のガラス越しに商品を眺めていると、ダイエーよりも0の数がいくつか多いという奇妙奇天烈な価格設定。いやいや、この店だけ通貨単位が”円”でなく”バーツ”や”ペソ”なんじゃないかとも思いましたが、ここは大都会。そして店は怪しげな空気ですからテレビでよく見るボッタクリ風俗みたいな悪徳業者なのかもしれません。このままでは危険です。ワイドショーで「ボッタクリ風俗被害者のMさん」とか銘打たれてスリガラスみたいなモザイク越しに音声を変えられながらのインタビューを受けることは必至です。
半ベソで脱出し、そのままの勢いで隣の店舗に転がり込みます。そこも先程と同様に怪しいことこの上ない店だったのですが、色々と物色しているうちに隣で突っ立ってた店員が話しかけてきやがりました。
「財布をお探しですか?こちらのお色は、、、」
いやいや待ってくださいよ。「お色」て何ですか。色を丁寧に言うのがセレブですか。そんな敬語は私の日常では聞いたこともありません。「お色」なんて使うのは、せいぜい「お色気」とかそういう、、、、ハッ!!
そうです。お色気です。つまりココも間違いなくボッタクリ風俗なのです。
ライオンに追われるガゼルのように死に物狂いで逃げ惑い、瞬発力マックスで店外へ飛び出すことで辛うじて難を逃れましたが、命からがら走り疲れて気付いた所はまた別の売り場でした。激しい動悸とともに身体中から見たことないような変な汁を噴き出しながらもなお、ガッツと勇気で財布を物色する私にまたしてもセレブ気取りの店員が話しかけてきました。
「何かお探しでしょうか?」
泣きながら恐怖で小刻みに震えている私は、何と答えればよいかわかりません。
「はい。自分の居場所を探しています。。。」
気がつけば帰りの切符を握りしめて傷心のまま駅のホームに立ち尽くす私の姿がありました。もちろん何ひとつ購入したものはありません。しかし今回のショッピングがただの骨折り損だったのかと言えば決してそうではないのです。得たものがない代わりに守り通したもの。如何なる財布を使おうとも、カネで買えないもの。それは命です。私は私の命を狙うガードマンや悪徳業者、はたまたライオンの魔の手に追われる戦いに勝利したのです。
噂によるとNYという所はカオスの渦で溢れる危険な街だと聞きます。今回の生死を賭けた私の冒険の記録が、皆さんの命を守るために役立てれば幸いです。