街はクリスマスムード一色ですね。この時期になると、もうドコへ行っても愛欲の奴隷と化したカップルどもと耳障りなクリスマスソングに街中が侵されています。真っ赤なお鼻のトナカイさんの歌を聴いても楽しい気分には一切なれず、むしろ真っ赤な鮮血にまみれた血染めのオモイデしか浮かんでこないアンチ・クリスマシズムの第一人者ことミスターＭです。

赤鼻のトナカイとはその容貌のせいで日頃から虐げられまくっている不細工なトナカイが、年に一度の大一番であるクリスマスイブに赤鼻という自分の容貌の欠点を逆手にとり、不細工な才能を遺憾なく発揮することでクリスマスの夜に華々しく、そして鼻々しく活躍するという何だか心温まるオハナシです。私にとってクリスマスといえば体も心も極寒の時期ですが、ココで不細工ゆえにひとりぼっちの私も赤鼻のトナカイに倣い、一発逆転の大発想でハートの温もりをゲットしてみようと思います。

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まず、私は齢25にして男の生命線とも言えるオデコのラインがじりじりと後退してきています。地球環境問題に絡めて言えば頭部の砂漠化現象、そして国際政治問題に絡めて言えば毛髪の粛正と毛根の貧困が進んでおり、これを簡潔にわかりやすく二文字で説明すると「ハゲ」というわけです。

しんしんと雪が降り積もる銀世界で、毛髪という防風シェルターを突破し、頭部に直接吹きすさぶ隙間風に震えている私にサンタクロースはこう言葉を投げかけたとしましょう。

「イルミネーションには～♪ツルツルの～♪おまえの頭が～♪役にたつのさ～♪」

そんなこと言われたら、いつも泣いてた私も今宵こそはと喜ぶこと必至です。恋人たちで賑わう街角の広場に設置された巨大なクリスマスツリーをよく見ると、ツリーの装飾として私が逆さ吊りにされているのです。ハゲ頭がツリーを美しくライトアップし、同時に私の絶望の涙が織りなす光の乱反射が恋人たちのロマンチックなムードを一層盛り立てます。

さらに私の欠点といえば頭部だけでなく、全体的にアキバ系な怒涛のごとく気持ち悪いルックスです。普段から愛用しているオタクパワー炸裂の霜降りジーパンも、この時期だけは霜降り部分が何だか冬っぽいものを連想させるという意味でむしろプラスに作用します。加えてだらしなく出っ張った腹もポイントです。いつもは「暑苦しいから近寄るなデブ！」「オマエいつも汗かいてるよな！」と皆にゴミクズのように扱われる愉快な私ですが、サンタクロースだけは違います。

「寒い冬には～♪蒸し暑い～♪おまえの腹が～♪役にたつのさ～♪」

そうなんです。私の体から放たれるオタクエキス満載のスチームが雪や風の脅威から恋人たちを守るのです。たとえ雨が夜更けすぎに雪へと変わろうとも、そこに汗だくな私がいるだけで暖かい光景が広がります。もはや人間除雪機です。そして冷凍の七面鳥を股間に挟めばキレイにコンガリ焼ける人間オーブンとしても活躍できますから、立ち上る湯気が食欲をそそり特別な夜の食卓を彩る私は一家に一台は欲しいマストアイテムになることに疑いの余地はありません。それ以外にもサンタの衣装がバッチリとハマる体型といえばオタクシルエットのデブ以外に考えられませんし、キャンドルの種火として脂肪のミッチリ詰まった腹に火をつければ、炎に包まれる私を見て恋人たちは楽しい雰囲気に包まれるハズですから、もうクリスマスとは私のためのお祭りと言っても差し支えないんじゃないでしょうか。うっかり見逃しがちですが、ジングルベルとシングルデブの語感が酷似している点も要チェックです。

こう考えると、もうクリスマスには楽しい要素しか見つかりません。皆さんもそれぞれの過ごし方で楽しいクリスマスを満喫してくださいね。もしもパーティなんかやるときはクリスマスの申し子的存在の私を誘ってみるのもアリなんじゃないですか？ひとりぼっちの部屋のスミでヒザを抱えながら、予定ガラ空きでアナタからの連絡を待ってます。