小学生の頃より河原に落ちてるシナシナになった大人用の雑誌を熟読しまくり、中学生に なる頃には辞書の「sex」とかその辺の単語に蛍光ペンでチェックを入れまくる勤勉さか ら周りの大人たちから神童と呼ばれたとか呼ばれてないとかでお馴染みのミスターMで す。若者の活字離れが叫ばれている昨今ですが、皆さんは普段から本を読んでますか?今 回は「活字の錬金術師」といういま自分で考えた異名をもつ私が当コラムを含めた所謂テキストというヤツ全般について思うことを勝手にお話しようと思います。
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今皆さんが手にしているこの「踊るで、しかし」もそうですが、書籍や雑誌などの紙媒体 のみならずウェブサイトのテキストや普段使っているメール、街角の貼り紙から広告に至 るまで日常には様々なかたちで文章に触れる機会が転がっています。文章とはコトバとい う情報伝達のツールを記号化することで缶詰のように時間を超えて保存できるようにした 人類の偉大な発明です。しかし主にその場にいる対面した相手とやりとりするコトバと 違って、文章の場合は細かいニュアンスが伝わりにくいのが難点ですね。相手の表情が見 えませんし身振り手振りや抑揚などの小技を使うこともできません。互いにやりとりする コトバに比べて、文章は発信者から受信者への一方通行ですから。
この欠点を補うために作家だとかテキスト職人だとかいう人たちはウマい比喩を用いたり 構成に気を遣って行間を読ませたり色々と工夫します。しかしこのプロのようなレベルの 高い表現技法を持ち合わせていない人も大勢いますし、格好付けて難しく書いても余計に 伝わり辛いことだってあります。書き手の意図を正しく伝える文章を簡単に作るためのア イデア、それが記号を使うことだったりするんです。
記号とは「!」や「?」や顔文字だけでなくフォントの色や形や大きさを変えるのも視覚 に訴えるという意味で勝手に記号的扱いということにしてしまいます。さっき偉そうに 「文章とはコトバの記号化」と言いましたが、本来のコトバを離れて文章でのみ通用する 記号を使うこと。これも現代人の素晴らしい発明だと思います。ここで「萌え~」とか言 いながら流行を無視した気持ち悪いファッションに身を包む私の友達からのメールの一部 をちょっと引用してみましょう。
「ちょwまた遅刻かよ∑( ̄口 ̄)次やったらマジぬっ殺す(笑)」
これは友人から待ち合わせの時間に遅れた私へ宛てられたメールですが、相手の意図を履 き違えると犯罪予告っぽくなり本気で人の生死に関わる大問題とも受け取られかねないと ころを記号を用いることで柔らかく表現しています。(笑)は「カッコワライ」と読むこ とが出来ますが、記号とされているのでわざわざそのようには読みません。つぅかむしろ 私がヤツを殺したい(本気)。
「ウハ!PCが逝ってしまった(爆)電源が切れませんf^_^;」
これはエロサイトを閲覧していてPCがとんでもないことになった友人からの悲痛の叫び ですが、顔文字使用のために凄惨さは薄れています。(爆)とは爆発ではなく爆笑の意 味っぽいですが、いっそのこと謎の大爆発に巻き込まれて大変な目に遭ってもらいたい。
以上の引用からわかるのは友人が破滅的に気持ち悪いことと、こんな友達しかいない私は 完全に(悪)。つまりカッコワルイということです。もはや記号や表現がどうこうとかは 関係なくなっているような気がしますね。
ここでさらにこの表現技法を使ってハードボイルド丸出しの緊張感が炸裂しまくる推理小 説っぽい文章を書いてみましょう。
ダンディズム溢れる名探偵ミスターMはパイプをくわえながらコートの襟を立て直しこう 言った。
「犯人はこの中にいる…」
ヨシオ「俺じゃねぇよ!」
フサエ「私も違うわ!」
タケシ「僕だって知らないよ(嘘)!」
…どうですか?以上の文章だけでは犯人なんてわからないはずですが、記号のおかげで ニュアンスがビンビン伝わってきて犯人が誰なのか一目瞭然です。調子に乗って記号だけ で怒涛の恋愛小説を書いてみます。
ミスターM「(好)!(´∀`)」
ナツコ「(嫌)!(`ヘ´)」
ミスターM「(愛)!(´Д`)」
ナツコ「(怒)!(゜Д゜)」
ミスターM「(悲)・・・(狂)(゜∀。)!!!」
ナツコ「(殺)(`皿´)!」
ミスターM「(泣)(T^T)」
ホラ、文章による説明も台詞も一切ないのに確実にフラレているのがわかるでしょう。そ してちょっと中国語っぽいでしょう。
このように記号は便利なツールです。しかし乱用が過ぎたり使い方を間違えたりすると、 新作ゲームの発売前日から夜を徹して店頭に並ぶオタクの如きキモさを醸し出してしまう という諸刃の剣でもあります。以上のことから私が何を言いたいかというと、それが自分 でもわからないので皆さん各自で行間を読んでニュアンスを感じ取ってください(終)。