数日前から昨日まで、これまでの私の人生の中でも最大級の風邪にうなされておりまして、生と死の狭間を幾日もさまよいながらも、今日地獄の底から無事に這い上がってきた甦る不死鳥ことミスターMです。
何だか身体がダルいとか、ちょっぴり頭が痛いとか、街角で見かけたカワイコちゃんの跡をコッソリ付けてしまうとか、その程度の軽い病気は最近でも何度かあったんですが、今回の私の体内で催されたウイルスの大運動会、病原菌の乱交パーティーはそんなものとは全く次元が違うのでございます。
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症状があらわれはじめた頃のごく初期の段階では、頭が少しズキズキするかな~多少寒気もするような~くらいで日常生活には何ら支障はありませんでした。まぁ睡眠不足のせいだろうということで、その日の夜はいつものように盗んだバイクで暗い夜のとばりの中へ走り出したりはせず、大人しく早めに寝ることにしました。悪寒の原因もきっと自分の存在が何なのかさえわからず震えているだけであって、とにかくもう家に帰りたい~のです。それこそ尾崎豊の15の夜に対する私のアンサーソングこと25の夜です。で、翌朝起きると…いやいや、私の体が発する異常事態発生のサインに叩き起こされると、五体が完全に石化しているんですね。全身がとてつもなく重く、自分の体が自分の体でないような感覚です。もしや見た者を石にしてしまうとかいう伝説のメデューサが、私の寝ている間に部屋にズカズカと乱入でもしてきたのではあるまいか!と思い、その侵入跡を確認するために上体を起こすや否や、後頭部に恐ろしいほどの激痛が走り、思わず倒れ込みます。そもそもメデューサが来たとしても私は目を閉じて寝てたわけですから関係ありませんね。ホントにホントにお馬鹿さん♪なんて思っていると、今度は息苦しさと悪寒に襲われます。とりあえずこの時点で、今日は一日起き上がれないことが確定です。というより起き上がることを放棄です。
早く寝るべし!さすれば道は開かれん!危機脱出のために再度就寝を試みましたが平衡感覚が麻痺しているため、まるで地面がグラグラと揺らいでいるように感じます。丸太で組んだ手作りイカダで大嵐に揺れる荒波の中を航行中とでも言いましょうか。そんな過酷なシチュのもとで、鼻ちょうちん膨らませて寝れるはずもありません。さらに意識的に大袈裟な呼吸をしなければ窒息してしまいそうなほどの息苦しさが私の睡眠を妨害し、全身汗だくで蒸し蒸しなのに何故か寒気で震えるという解決策の見えない大ピンチのこの状況です。そんなんでおちおち寝られるかってハナシですよ。百歩譲って寝れたとしても、雪山での遭難よろしくそのまま永眠です。
そんなことを痛みに貫かれた頭で考えながら、幾重にも重なる複合技で襲いかかってくる風邪の諸症状という名の刺客との格闘を続けているうちに、いつしか気を失うように眠りに墜ちていました。しかし眠っては起き、眠っては起きを短いサイクルで繰り返すうちに、確実に私の体力は削られていきます。
初日の攻防は大体こんな感じだったのですが、私の体を勝手に会場にしたウイルスの一大パレードはまだまだ止むことはありません。今日はクリスマスでもないのに、私の体内は賑やか、お祭り騒ぎです。しかも二日目以降からのヤツらは、いらんとこで無駄にオシャレを気取ったおフランス料理ちっくなコース形式で攻めてくるようになりました。いやいや、私の体内でイベント開くなら飲食はせめてワンドリンクくらいにしてくれよという叫びも虚しく、豪華な苦しみのフルコースに突入です。
二日目
立ち上がれないほどの目眩。便意を催しても、トイレまでの道のりは長く険しいものです。限界まで我慢するか、その場で豪快にぶりぶりタレ流す無礼講に走るかという究極の選択を迫られました。たかだか菌ごときが私の人間としての尊厳を試してきやがったのです。ヒトであることを辞め、これからは獣として生きようかとも一瞬だけ思いましたが、何とか排便を最小限の回数と最短の時間で凌ぎきり、布団の中でなくトイレできちんと用を足すことに成功。これぞ理性の勝利です。いいな♪いいな♪人間っていいな♪
そして気がつけば全身汗ダルマです。
三日目
ウイルスどもの仕掛けた関節技が見事にキマり、腰が完全に粉砕。寝返りすらままなりません。腰が可動しなくなったらピチピチギャルとイヤらしいことも出来なくなります。でも健康にぐりぐり可動したとしても、私は別の要因でイヤらしいことが出来ないような気がして、いっそ死んでしまおうかとも考えました。
もちろん全身汗ダルマで。
四日目
脳が処理落ちしたようでうまく機能しません。携帯に送られてきた友達からのメールに返信すべく文をうっていると、途中からどうしようもない倦怠感に襲われます。もう複雑な思考は無理です。
「風邪は大丈夫?明日には治りそう?それと来週〇〇に行こうよ!」
そんな複数のことを一度に言われても理解できません。私は「十人の話をいっぺんに聞き分ける薄目の偉い人。しかもおちょぼ口」として歴史に名を残した聖徳太子とは違うのです。
そんなことより、またしても全身汗ダルマです。
翌五日目に、ようやく長い戦いに終止符が打たれました。日替わりで展開されるおフランス・シェフのプロの技を活かした深みとコクのある豪華な苦しみフルコースを味わい、死と隣り合わせの地獄だった数日間が嘘のように目覚めのよい朝です。窓を開け、部屋に朝の日差しを目一杯取り込みます。新緑のにおいを満喫し、小鳥のさえずりに耳を傾けていると、思わずパジャマの前ボタンを筋肉の膨張だけで全て弾き飛ばしてしまいそうになるほどの清々しさです。そんなことをすれば風邪が治ったにも関わらず、いらんところで全身汗ダルマです。立ち上がって歩けること、呼吸が出来ること、痛みなく普通に過ごせることはこんなにも有り難いのだということを、散らばったパジャマのボタンを拾い集めながら実感していました。
しかし今回の風邪がこんなにも長期に渡り、また症状が重かったのは何故なんでしょうか?というより、長いこと本格的な風邪とは無縁な私が、寝込んでしまった原因は何なのでしょうか?家にあった薬が頭痛、関節痛、生理痛、歯痛、筋肉痛、神経痛と多様すぎる痛みに対応できることで、かえって一つの症状に対する効果は薄いんじゃねーの的な疑いが拭えません。その前に、日に三度で一度に2錠ずつ服用しなければならない薬なのに、箱を開けると全部で3錠しか入っていないという準備の甘さが問題です。そしてうがい手洗いなんて普段からろくにしない私ですから、満員電車でOLのお尻を触るハゲオヤジみたいな不浄な手で食事をいただいたと同時に、ウイルスもモリモリいただいてしまったのではという予想もできます。
ともあれ皆さん、風邪には気をつけましょう。「病は気から」と言いますが、あれは「病気の原因は気の緩みであり、気力を保っていれば病気にはかからない」という根性論的意味合いだけではなく「健康管理に気を配っていれば病気になりませんよ」という解釈も成り立つのです。というより恐らくメインはそっちです。
電車でお尻を触るような病気を患っている人は根性で治すしかありませんが、ともかく健康な身体と健康な精神を維持していきたいものです。ウイルスによる病気で家から出られなくなるか否かも、それ以外の病気で檻から出られなくなるか否かも、気の在り方しだいですから。
とりあえず、これからは気を高めるために、脱衣の際は膨張する筋肉の力だけで衣服を引きちぎっていきたいと思います。